【徹底解説】老後資金はいくら必要?生活費、年金、資産形成まで完全ガイド
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人生100年時代と言われるなかで、リタイア後のいわゆる「老後」と言われる期間に不自由のない生活を送るには、お金はいくら必要なのでしょうか。
2019年頃には、「老後2000万円問題(※)」など話題にもなりましたが2025年現在、
一般的に「老後資金」はどれくらい必要になるのでしょうか。
この記事では老後の必要資金総額ともらえる年金、また年金以外の給付制度や補助金についてご紹介します。
ゆとりある老後生活に向けて今からどのように備えるべきなのか考えることが大切です。
※老後2000万円問題とは
2019年に金融庁・金融審議会「市場ワーキング・グループ報告書」により報告された試算によると、
退職後30年間の生活には約2000万円が不足すると言われています。
目次
老後の生活費と老後のライフイベントにかかるお金とは
では実際、老後の生活費には月々どれくらいのお金が必要になり、
30年間だと総額いくら必要になるのでしょうか。
(ここでの老後とは、65歳定年退職以降30年間を想定しています。)
- 消費支出 :日常の生活を営むにあたり必要な商品やサービスを購入して支払った支出(消費税、自動車取得税も含む)
- 非消費支出:税金や社会保険料など世帯の自由にならない支出および借入利子
(ケース①)夫婦2人世帯の場合
消費支出 | 非消費支出 | 合計 | |
---|---|---|---|
1か月あたり | 250,959円 | 31,538円 | 282,497円 |
年間 | 3,011,508円 | 378,456円 | 3,389,964円 |
30年間 | 90,345,240円 | 11,353,680円 | 101,698,920円 |
(ケース②)単身世帯の場合
消費支出 | 非消費支出 | 合計 | |
---|---|---|---|
1か月あたり | 145,430円 | 12,243円 | 157,673円 |
年間 | 1,745,160円 | 146,916円 | 1,892,076円 |
30年間 | 52,354,800円 | 4,407,480円 | 56,762,280円 |
出典:家計調査報告〈家計収支編〉2023年〈令和5年〉平均結果の概要P.19 丨総務省統計局
想定される老後に発生するライフイベントごとの費用
支出項目 | 支出金額 |
---|---|
介護費 | 一時費用(介護ベッド購入等)平均74万円 平均8.3万円 |
医療費 | 65~69歳(3割負担)平均1.9万円/月 70~74歳(2割負担)平均1.4万円/月 75歳以上(1割負担)平均8千円/月 |
葬儀 | 1件あたり約118万円 |
子の結婚援助 | 首都圏平均約180万円 |
住宅リフォーム | 約137万円 |
お墓購入 | (一般墓)平均約149.5万円 (樹木葬)平均約63.7万円 |
参照元:<介護費>2021(令和3)年度生命保険に関する実態調査
<医療費>厚生労働省 国民医療費、医療費の自己負担割合について
<葬儀>株式会社鎌倉新書 第6回お葬式に関する全国調査(2024年)
<子の結婚援助>ゼクシィ結婚トレンド調査2024【首都圏】
<お墓購入>株式会社鎌倉新書 第15回お墓の全国消費者実態調査(2024年)
<住宅リフォーム>令和5年度住宅市場動向調査報告書
上記図の通り、
65歳以降夫婦2人世帯でひと月あたりおおよそ28万円、単身世帯だと16万円が
老後の生活費として最低限の支出となります。
また介護・医療費や、冠婚葬祭費、自宅のリフォーム費、
加えて趣味や旅行などゆとりある老後を目指すとさらに支出が見込まれます。
ゆとりある老後生活をおくるには
では、ゆとりある老後生活をおくるためには、どれくらい資金が必要になるのでしょうか。
生命保険文化センターの生活保障に関する調査によると、
全国平均で38.4万円/月がゆとりある老後生活には必要だと考えるという調査結果が出ています。
この結果から、「老後2000万円問題」と言われる試算よりも、
人々が考えるゆとりある老後生活には一人ひとりの備えがさらに必要であることがわかります。
ゆとりある老後生活(老後30年) |
---|
全国平均38.4万円/月 × 12か月 × 30年 = 約1億4000万円 |
参照元:生命保険文化センター2022(令和4)年度「生活保障に関する調査」
年金はいくらもらえるの?
そもそも、老後の生活を支える年金はいくらもらえるのでしょうか。
ケース別にご紹介していきます。
(ケース①)夫婦2人世帯の場合(65歳以上平均)
①-1 夫、妻ともに厚生年金受給者
夫:169,006円/月 |
妻:109,261円/月 |
夫婦合計:278,267円/月 |
65歳以降30年間合計:(278,267円×12か月) × 30年間 = 100,176,120円 |
①-2 夫が厚生年金、妻が国民年金受給者
夫:169,006円/月 |
妻:56,621円/月 |
夫婦合計:225,627円/月 |
65歳以降30年間合計:(225,627円×12か月) × 30年間 = 81,225,720円 |
(ケース②)単身世帯の場合<厚生年金受給者>(65歳以上平均)
②-1 男性
男性:169,006円/月 |
65歳以降30年間合計:(169,006円×12か月) × 30年間 = 60,842,160円 |
②-2 女性
女性:109,261円/月 |
65歳以降30年間合計:(109,261円×12か月) × 30年間 = 39,333,960円 |
参照元:厚生年金保険・国民年金事業統計
数字だけで見ると、
(ケース①-1)夫婦二人ともに厚生年金受給者や
(ケース②-2)厚生年金受給者の単身世帯(男性)であれば、
65歳以降30年間の生活支出は、年金収入のみでもまかなえる試算になります。
しかし、実際は介護・医療費や、自宅のリフォーム費用、お子さまへの援助など
突発的にお金が必要になることも多く、
さらに、趣味や旅行などを楽しむゆとりある老後生活を送るには、
おおよそ年金収入だけでは不足することが考えられます。
年金についての詳細記事はこちら▼
老後に使える年金以外の制度とは
それでは年金以外にも、それぞれの状況に応じて受け取れる給付金制度や補助金制度にはどんなものがあるのでしょうか。
ご紹介します。
年金生活者支援給付金
年金生活者支援給付金は、消費税率引き上げ分を活用し、
公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準額以下の方に、
生活の支援を図ることを目的として、年金に上乗せして支給するものです。
<支給要件>
以下の支給要件をすべて満たしている方が対象となります。
(1)65歳以上の老齢基礎年金の受給者である。
(2)同一世帯の全員が市町村民税非課税である。
(3)前年の公的年金等の収入金額※1とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は
889,300円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は887,700円以下※2である。
高年齢雇用継続給付
高年齢雇用継続給付は、
高年齢者の就業意欲を維持、喚起し、65歳までの雇用の継続を援助、促進することを目的とし、
60歳到達等時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の一定の雇用保険一般被保険者に給付金を支給する制度です。
高年齢雇用継続給付には、
- 雇用保険(基本手当等)を受給していない方を対象とした「高年齢雇用継続基本給付金」
- 雇用保険(基本手当等)の受給中に再就職した方を対象とした「高年齢再就職給付金」
があります。
支給要件はどちらも同じですが、同時に受給は出来ません。
いずれかの対象になるのかをしっかり確認することが重要です。
<支給要件>
支給対象期間において、一般被保険者として雇用されている各月(暦月のことで、その月の初日から末日まで継続して被保険者であった月に限ります。)(これを「支給対象月」といいます。)において、
次の要件を満たしている場合に支給の対象となります。
1.支給対象月の初日から末日まで被保険者であること
2.支給対象月中に支払われた賃金が、60 歳到達時等の賃金月額の75%未満に低下していること。
3.支給対象月中に支払われた賃金額が、支給限度額(※)未満であること。
4.申請後、算出された基本給付金の額が、最低限度額(※)を超えていること。
5.支給対象月の全期間にわたって、育児休業給付または介護休業給付の支給対象となっていないこと。
(※)この金額は、「毎月勤労統計」の平均定期給与額により毎年8月1日に改定されます。
参照元: 厚生労働省 高年齢雇用継続給付Q&A
就職促進給付
就職促進給付とは、早期再就職を促進することを目的とし、以下の手当等が支給されるものです。
- 再就職手当
- 就業促進定着手当
- 就業手当
- 常用就職支度手当
支出に対する補助金制度
支出に対する補助金制度も色々あります。
- 補聴器購入のための補助金制度
- スマホ購入費補助金などの自治体独自の制度
- 介護にかかる費用に対する支援制度
などがあります。
補助金制度については、各々の状況や住んでいる自治体によっても利用できる制度は異なるため、
利用対象になるのか確認することが大切です。
老後に備えて今からできること
ここまでお伝えしてきたとおり、ゆとりある老後生活を送るためには、年金収入だけでは到底足りません。
就業を継続することで給付金を受給したり、補助金を活用したりするのはもちろんですが、
今から一人ひとりが老後に向けての備えを行うこともとても重要になります。
ここからは、今からできる老後資金の備えについてポイントを3つご紹介していきます。
①老後のライフプランを考える
各々の将来について、実際には何が起きるかは分かりません。
しかし、自分や家族の今後の想定されるライフイベントから見通しをたてることは可能だと思います。
自分の退職のタイミング、自宅のリフォーム、趣味の充実、お子さまの結婚やお孫さまの誕生など、
自分自身がどのように老後生活を送りたいか一度しっかりと考えてみることが大切です。
②マネープランを考える
老後のライフプランが明確になると、必要になるのは「お金」です。
想定している老後生活にはどれくらいの「お金」が必要なのか、そのお金はどのように準備するのか、考えていく必要があります。
年金や退職金はいくらもらえるのか、家や車のローンはどうなっているのか、今現在の貯蓄状況など、しっかりと確認して老後の「お金」についてシミュレーションしてみましょう。
▼老後資金のシミュレーションはこちら
③実際に備えはじめよう
老後生活に向けたマネープランが出来たら、あとはそこに向けて、「お金」を実際に準備しましよう。
一つは、退職後のセカンドキャリアのため今から資格取得を目指して勉強したり、
思い切って転職をしたりして将来的な貯蓄や安定収入を増やす方法があります。
二つめは、NISAやiDeCoのような制度を活用して、「資産形成」を行う方法です。
現在では、この資産形成が非常に重要であるとされています。
実際に備える際には、「近い将来必要なお金」と「時期はまだ未定だが、必要になってくるお金」を色分けしてマネープランを考え、
貯蓄と資産形成をバランスよく組み合わせながら備えることが大切です。
▼詳しい資産形成の制度やライフプラン、マネープランの考え方はこちら
まとめ
ここまで老後生活に必要になるお金ともらえるお金、老後資金の備え方について解説してきました。
それぞれがゆとりある老後生活を送るために、今からできることは何か考えるきっかけになればうれしく思います。
この記事を読んでいただいている方のなかには、これから就職や転職を検討されている方もいらっしゃると思います。
ご自身のキャリアプランとあわせて充実した老後生活のためにも、今から老後のために出来ることをやっていってみてはいかがでしょうか。