夫婦の年金平均受給額は?シミュレーションと老後資金の準備
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結婚、子育て、引越…。夫婦のライフイベントは何かと出費が多いものです。将来を考えたとき、老後の備えや年金の受給額は気になるところですよね。
この記事では公的年金について、将来の年金受給額の目安や金額の決まり方を解説します。
目次
夫婦の平均年金受給額の内訳と比較
まずは、現在65歳以上の夫婦が受け取っている年金額の平均を見ていきましょう。
下の表では、夫が現役時代に正社員であった世帯の、当時の世帯年収と現在の年金受給額の平均を示しています。妻の就業状況によって世帯年収が変動するため年金受給額も自ずと変わります。
現役時代の就業状況 | 現役時代の世帯年収 | 現在の年金受給額 | |||
夫 | 妻 | 年間 | 毎月 | 年間 | 毎月 |
正社員 | 正社員 | 504万2千円 | 42万0千円 | 346万4千円 | 28万8千円 |
フルタイム パート | 441万1千円 | 36万7千円 | 299万0千円 | 24万9千円 | |
アルバイト | 415万9千円 | 34万6千円 | 296万3千円 | 24万6千円 | |
専業主婦 | 462万8千円 | 38万5千円 | 318万5千円 | 26万5千円 |
参考:e-Stat令和4年 年金制度基礎調査(千円未満切り捨て)
給与収入と年金収入
上記の表からも分かるように、現役時代の収入と年金受給額には大きな差があります。
例えば夫が正社員、妻が正社員世帯の場合、現役時には毎月42万円の収入がありました。しかし、年金受給後は28万8千円になり、その差は13万2千円です。
その他の妻の就業状況であっても、やはり毎月12万円程度がマイナスとなっているようです。
現在の収入が12万円減少した場合、生活は成り立つのでしょうか。具体的な支出を例に見てみましょう。
老後の生活費のギャップ分析
上で示した24~29万円の年金受給額は、老後の生活に十分な額となっているのでしょうか。
総務省の統計によると、65歳~69歳夫婦の1か月間の平均支出額は271,611円です。
支出項目 | 月支出額 |
食費(外食含む) | 77,953 |
住居 | 19,683 |
光熱・水道 | 18,509 |
家具・家事用品 | 9,942 |
衣服・靴 | 9,300 |
医療費 | 19,344 |
交通・通信 | 39,473 |
教養娯楽 | 34515 |
その他 (税金、保険料、冠婚葬祭など) | 42,892 |
合計 | 271,611 |
現役時代の収入・納付状況によりますが、年金のみでの生活となると収支ゼロ~やや足りないイメージです。
次項からは、実際に自分はいくら位年金を貰えるのか、また、どうしたら安心した老後を過ごせるのかを考えていきましょう。
年金制度の基本解説
まず、年金には公的年金と私的年金の2種類があり、この記事では公的年金について説明します。公的年金は、国の社会保障制度の1つとして、社会全体で高齢者等の生活を支える制度です。
国民年金と厚生年金の違いと加入条件
公的年金は、国民年金と厚生年金の2階建てになっています。それぞれの違いは下記の通りです。

国民年金(基礎年金)
0歳以上60歳未満のすべての人が加入対象。自営業やフリーランスの場合、国民年金のみに加入。
保険料は誰でも一律の金額で、毎年見直し。ただし、会社員・公務員に扶養されている専業主婦/主夫の場合は保険料の負担なし。
厚生年金
会社員や公務員が対象。
給料に応じた保険料で会社が半額を負担。加入条件を満たす場合は正社員でなくても加入することができる。
年金受給額の計算方法(国民年金・厚生年金)
これまでは、平均受給額について述べてきました。では、年金額はどのように決まるのでしょうか。
国民年金と厚生年金は、計算式も異なります。
国民年金の計算式
受給額=816,000円(令和6年)× 納付月数/480か月
受給額は、納付した月数によって変動します。

ワンポイント! 産前産後に納付免除された期間については、納付月数に含めることができます。その他の免除制度や納付猶予では一定の係数がかけられます。 また、学生納付特例を適用して追納していない場合、その期間分は納付月数に含まれません。 免除・納付猶予を受けた場合の扱いについての詳細は、日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度をご覧ください。
厚生年金の計算式
厚生年金の受給額は、在職中の報酬に比例する部分と、その他2つの要素によって決まります。
受給額 = 報酬比例部分 + 経過的加算 + 加給年金額
詳細な条件・計算は日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額をご覧ください。

自分の年金額を確認する方法
ここからは、自身が将来受給できる年金額を確認する方法をご紹介します。
「ねんきん定期便」で確認できること
毎年、誕生月になると「ねんきん定期便」が届きますよね。「ねんきん定期便」では、以下のことが確認できます。
- 年金の月別納付状況
- 保険料納付額の累計
- 年金加入期間の累計
- これまでの加入実績に応じた年金額
などです。くわえて50歳以上になると私たちが知りたい「年金受給見込み額」が記載されます。(60歳まで同条件で加入し続けることが前提)
では、「ねんきん定期便」でどこをチェックすればいいのでしょうか。それは「年金の月別納付状」欄です。文字通り、納付状況を表しているのですが、学生特例や結婚、転職などで届け出を忘れている場合「未納」や「未加入」と表記されます。このような期間があると将来受け取る年金が少なくなってしまいます。
節目の年齢と定められている35歳・45歳・59歳のときには詳細な加入状況が記された案内が封書で届きます。封書の場合は「年金加入記録回答票」が入っており、この用紙からも追加・修正依頼ができます。
「ねんきんネット」で確認できること
日本年金機構が提供しているサービス「ねんきんネット」では、オンライン上で下記の機能を利用できます。
- 年金記録の確認
- 年金見込み額の確認
- 年金の支払いに関する通知書の確認
- 追納等可能月数と金額の確認
- 電子版「ねんきん定期便」のダウンロード
などです。利用するには、マイナポータルとの連携、またはねんきんIDの登録を行います。ねんきんIDの登録をする場合は基礎年金番号とメールアドレスが必要となるため、手元に準備して始めましょう。
将来に向けてできること
年金の繰下げ受給
老齢基礎(厚生)年金の受給を65歳以降に繰り下げる(遅らせる)ことで、最大84%増額可能。
繰下げ加算額
増額率(最大84%) = 0.7% × 65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数
繰下げ受給の詳細については日本年金機構ホームページをご参照ください。
貯蓄と資産形成の活用
貯蓄と、さらにNISAやiDeCoなどを活用し、老後資金の準備を進める。制度の詳細は関連記事をご覧ください。
共働きのメリット活用
夫婦ともに厚生年金に加入することで、将来の受給額を増やせる。

ワンポイント! 2024年10月の法改正により、従業員数51名以上の企業で働くパート・アルバイトの社会保険・厚生年金保険に加入する条件が緩和されました。これによって、週20時間以上勤務・月88,000円以上の収入がある場合には、厚生年金に加入することができるようになりました。将来受け取る年金受給額が増えるだけでなく、医療の面でもメリットがあります。こうした点も踏まえて、パート・アルバイト探しや再就職を検討してみるのも一案です。
まとめ
「老後2,000万円問題」が話題となったように、年金だけでは生活費が不足する可能性があります。もちろん生活水準や年金受給額は人によって異なりますので、この金額が必ずしも不足するとは言えません。しかし仕事を引退した後のセカンドライフを満喫するには、先々を見据えて早くから準備しておくことは大切です。
受け取る見込みの年金額を早めに確認しておき、将来をどのように過ごしたいかイメージしてみてください。そして、何年間でいくら貯められるのか考えてみましょう。その際には、前述した資産形成制度を活用し、運用益だけでなく節税もするなど、今できることからコツコツと始めておくとよいでしょう。